タバコと同じ発がん性分類なのはどれ?
国際がん専門機関(IARC、以下IARCと記載)が、タバコと同じ発がん性分類のグループ Ⅰ(ヒトに対して発がん性がある)と発表したものは、以下のうちのどれでしょうか?
今回の健康情報は、発がん性を持つ食品についてご紹介致します。
がんは、2023年の日本人の死因第1位の原因です。全死亡者に占める割合は24.3%で、4人に1人弱の方ががんでお亡くなりになっています。
本情報が、がんを少しでも遠ざけて健康で長生きするためのヒントになれば幸いです。
質問
国際がん専門機関(IARC、以下IARCと記載)が、タバコと同じ発がん性分類のグループ Ⅰ(ヒトに対して発がん性がある)と発表したものは、以下のうちのどれでしょうか?
IARCは、発がん状況の監視、発がん原因の特定、発がん性物質のメカニズムの解明、発がん制御の科学的戦略の確立を目的とした世界保健機関(WHO、以下WHOと記載)の機関です。
IARCは、人に対する発がん性に関する様々な物質・要因(作用因子)を評価し、以下の4段階に分類しています。
IARCによる発がん性の分類
グループ Ⅰは、「発がん性の十分な証拠」があるものになります。
回答と解説
5つの選択肢は、以下のグループに分けられます。
ハムやソーセージ(加工肉)やお酒は、たばこと同じグループ Ⅰ。
本当にびっくりしました。
非常に熱い飲み物、牛肉や豚肉などの赤肉、ポテトチップに含まれるアクリルアミドもグループ Ⅱ Aで、健康のためには注意が必要です。
引き続きそれぞれについての個別の問題点などをご紹介致します。
IARCは、加工肉について10件の研究成果を評価し、「毎日継続して1日当たり50グラム摂取するごとに、大腸がんのリスクが18%増加する」としています。
加工肉は、「塩漬け、塩せき、発酵、燻煙、その他香りや保存性を高めるための加工をした肉」を指し、具体的には「ハム、ソーセージ、フランクフルト、コンビーフ、ビーフジャーキー、塩味の切り干し肉、缶詰肉、食肉調製品(ソースを含む)」などであり、私たちが日常的に食べる食品を多数含みます。
幸い日本は、世界的に見て最も加工肉の摂取量の低い国(平均摂取量は1日13g)であり、平均的な摂取量の方では、がんのリスクを上げることはほとんどないと考えられています。
但し、ソーセージなどの加工肉が好きでたくさん食べる方は、がんのリスクが上がる可能性があります。食べ過ぎには注意しましょう。
加工肉の発がん性のメカニズムとしては、以下が指摘されています。
加工肉の発がん性のメカニズム
WHOは、飲酒は頭頸部(口腔・咽頭・喉頭)がん、食道がん(扁平上皮がん)、肝臓がん、大腸がん、女性の乳がんの原因となると認定しています。
また、アルコール飲料中のエタノールとその代謝産物のアセトアルデヒドの両者に発がん性があり、少量の飲酒で赤くなる体質のお酒が弱い人では、アセトアルデヒドが食道と頭頸部のがんの原因となるとも結論づけています。
残念ながら、飲酒が関連する発がんでは安全な飲酒量は示されておらず、少量でも飲めば発がんのリスクが高まります。
お酒は、多くの方にとって生活の一部になっており完全に止めるのは困難です。
但し、飲む量が多くなるほど発がんリスクが高まりますので、健康のために可能な範囲で飲酒量を減らしましょう。
非常に熱い飲料(65℃以上)は、食道の内側の膜を損傷させ、その膜の修復作業で細胞分裂が繰り返されることで、がんになりやすくなるとされています。
イラン北東部のゴレスタン州で5万人を対象に行われた研究では、「普段飲んでいる飲み物の温度に応じて食道がんのリスクが上昇し、70℃を超える熱いお茶を飲む人は、65℃を下回るぬるいお茶を飲む人より、食道がんの罹患率が8倍高かった」という結果が発表されています。1)
お茶は熱くないとという方もいらっしゃいますが、熱すぎると食道がんのリスクが高まりますので、冷ましてから飲みましょう。
赤肉は、牛肉や豚肉、羊肉(ラム、マトン)、馬肉、山羊肉などの哺乳動物の肉をさします。
IARCは、赤肉については、「加工肉ほど強い証拠が見出せませんでしたが、関連があるとすると、毎日継続して1日当たり100グラム摂取するごとに、大腸がんのリスクが17%増加する」としています。
日本は、世界的に見て最も赤肉の摂取量の低い国(平均摂取量は1日50g)であり、平均的な摂取量の方では、がんのリスクを上げることはほとんどないと考えられています。
但し、肉料理が好きで赤肉をたくさん食べる方は、がんのリスクが上がる可能性があります。
食べ過ぎには注意しましょう。
ポテトチップスは、発がん性を有するアクリルアミドを含むとされています。
アクリルアミドは、ジャガイモ製品などを120℃以上の高温調理した際に生じる化学物質で、ポテトチップスでは、油で揚げる際に生成されます。
カルビーや湖池屋などのメーカーは、アクリルアミドの生成量を減少させる様々な工夫を凝らした製品づくりを行っており、実際に効果を上げています。
但し、家でポテトチップスを作る際は、揚げ過ぎて焦げるとアクリルアミドの生成量が増えるので注意しましょう。
アクリルアミドは、ポテトチップス以外でも以下の食品に多く含まれており、作る際に加熱し過ぎないようにしたり、食べ過ぎに注意しましょう。
アクリルアミドを多く含む食品
なお、加熱していない生の食材にはアクリルアミドは含まれていません。
加熱調理した食品でも茹でたり、蒸したりした食品もアクリルアミドが含まれていないか、含まれていても極微量であることが報告されています。
家庭でアクリルアミドを減らすには、焼く以外の調理方法を選択するのが良いでしょう。
がんを避けるには、日常生活で以下に注意しましょう。
今回の健康情報では身近な食材の発がん性について、IARCによる発がん性の分類をお伝えしましたが、この分類には注意点が1つあります。
それは、この分類が発がん性の有無を評価していますが、発がん性の強さは評価していないことです。
タバコとお酒、加工肉はIRACの分類では同ランクですが、その発がん性の強さは、タバコ>お酒>加工肉の順と考えられます。
非常に熱い飲み物、牛肉や豚肉などの赤肉、ポテトチップに含まれるアクリルアミドに発がん性があったとしても、タバコに比べると発がん性は明らかに弱いです。
また、これらの食材は、リスクがある一方で栄養価の面などから私たちの食生活に無くてはならないものです。
5つの食品について注意喚起しましたが、発がん性があったとしてもそれほど強くなく、栄養摂取のために必要なものでもあります。必要以上に怖がったり、神経質になりすぎない方が良いでしょう。
リスクがあることを理解して飲み過ぎや食べ過ぎに注意したり、無理のない範囲でこげを避けたり調理法を選択するようにしましょう。
ちなみに・・・ソーセージにビール、最高の組み合わせです。パリッとした歯ごたえにあふれる肉汁、ビールが何倍も旨くなります。発がん性があると言われても、私はやめることは出来ません。でも、出来るだけ回数や量は、減らしたいと思います。
【出典】
1)Farhad Islami,et al. Tea drinking habits and oesophageal cancer in a high risk area in northern Iran: population based case control study. BMJ. 2009 Mar 26;338:b929.