筋肉量=「HP」、筋肉と寿命の関係とは? ②
適度な筋トレで寿命を延ばそう!
寿命が延びる理由その2筋肉が病気の予後や健康状態を左右する
日本人の高血圧患者数は約4,300万人と推定され、3人に1人は高血圧と考えられています。
高血圧と関係の深い病態が心不全です。この病気の進行に筋肉量が大きく関与しています。
高血圧があると、心臓は絶えず強い圧力をかけて血液を送り出さなくてはならず、筋肉が厚くなって心肥大を起こします。
さらに高血圧が続くと、心臓は徐々に疲弊して心臓のポンプ機能が低下し、心不全のリスクが高まります。
このような状況下で、心臓を助けるのが筋肉です。
ふくらはぎの筋肉は第二の心臓とも呼ばれ、歩いてふくらはぎの筋肉を動かすことで足に滞っている血液を心臓の方へ押し戻して心臓の負担を軽減します。
糖尿病の予防や改善にも、筋肉量が影響を与えます。
筋肉量が多いと基礎代謝が増えて、血液中の糖の消費量が増加しますが、筋肉の利点はそれだけではありません。
筋肉が多い利点
- 基礎代謝が増える。
- 筋肉がブドウ糖を取り込み、血糖値が上がり難くなる。
- 転倒リスクが低下する。
- 水分の保持量が増える。
- 免疫力が向上する。
など
筋肉は、血液中の糖が増えると増えたブドウ糖の一部を取り込む働きを持ち、筋肉量が多いと血糖値が上がり難くなります。
骨粗鬆症が進行し、転倒などで骨折して要介護に至るケースがありますが、筋肉量が多いと転倒のリスクが低くなり、要介護のリスクも低下します。
筋肉は水分を溜める働きも持ち、筋肉量が多いと夏場の脱水や熱中症を防いでくれます。
リンパ球などの免疫細胞は、骨格筋内のアミノ酸によって活性化されます。そのため、筋肉量の増加は免疫機能の向上につながり、風邪のリスクが低下します。
最近の研究で、骨格筋は運動時に様々な生理活性物質を分泌することがわかってきました。
生理活性物質はマイオカインと呼ばれ、代謝の促進による脂肪肝改善・体脂肪分解、認知症の予防、骨形成促進、動脈硬化予防、免疫能改善、抗炎症作用などを持つとされています。
筋肉の量が多いとマイオカインがたくさん作られ、全身の健康に良い影響を及ぼします。
寿命が延びる理由その3動くために筋肉が必須
生きるために動かす筋肉が非常に重要です。
筋肉は一度減少すると、動くのがつらくなったり疲れやすくなって動かなくなり、食欲の低下や栄養状態も悪化し、更に筋肉が減少するという悪循環に陥りやすくなります。
人は動けなくなると廃用などで一気に様々な機能が低下します。
動かなくなると、趣味が出来なくなったり、人との触れ合いが減って認知症などのリスクも高まります。
足の骨折などで寝たきりになって、認知症など様々な病気が進行したという話を聞かれた方も多いと思います。
口や喉の筋肉も非常に重要です。
これらの筋肉は食べるために必要な筋肉であり、筋肉量が低下すると食べづらくなり、食事量が減ることで筋肉量が減って、更に食べられなくなるというような、悪循環に陥る可能性があります。
但し、筋トレのやりすぎは健康を損なう
筋肉を増やすには、筋肉の原料になるたんぱく質を食事から摂って、筋肉に負荷を与えることが必要です。
筋肉に負荷を与える方法は、様々な運動やスポーツでも良いのですが、筋肉の負荷を主目的としたトレーニングが筋トレです。
筋トレを行って、筋肉量を増やせば健康度が上昇しますが、やりすぎは体に負担をかけて逆に健康度が低下します。
では、どのくらいの筋トレが健康に良いのか?その答えは、東北大、早稲田大、九州大の研究グループの研究報告が参考になります。
研究によると、最もリスクが低下した筋トレの時間は、死亡で週40分(17%低下)、心血管疾患で週60分(18%低下)、がんでは週30分(9%低下)、だったそうです。
一方で、筋トレの時間が週130~140分を超えると、やればやるほどリスクが高まる、という結果が出たそうです。
ただし、糖尿病だけは、週60分でリスクが17%低下した後も、やればやるほどリスクは下がっていたとのことでした。
総合的に考えると筋トレは、週に30分~60分程度にするのが良さそうです。
食事やサプリメントなどで筋肉の原料になるたんぱく質をしっかり摂って、筋トレなどの運動を適度に行えば筋肉量が増えて体の健康度も向上します。
①の副題として『寿命でも「筋肉は裏切らない」は本当だった』と少々おおげさに記載しました。
実際には、筋肉量が多くても病気になったりお亡くなりになるケースもあり、裏切られたり、全てを解決できないこともありますが、間違いなく筋肉は私たちの味方です。
ご高齢の方は何もしなければ筋肉が加速的に減少しますので、健康維持のために筋肉量を増やす努力を怠らないようにしましょう。