今回のテーマは、葛根湯について。
葛根湯は、非常に知名度が高い漢方薬です。
葛根湯医者の落語(頭痛、腹痛、足痛等どんな患者にも葛根湯を処方し、そしてついでに付き添いで来た人にも、暇で退屈だから飲めばと葛根湯を処方したという江戸時代の藪医者の話)があることをご存じの方も多いでしょう。
今回の健康情報では、葛根湯とはどんな漢方薬であるかお伝えすると共に、非常に使用頻度が高いと考えられるかぜの際の正しい使用方法についてご紹介致します。
葛根湯は、なぜ「ひきはじめ」なのか?
「かぜのひきはじめに葛根湯」と紹介するテレビCMを見られたことがある方も多いと思いますが、なぜ、ひきはじめなのでしょうか?
その理由は、葛根湯の効き方と大きな関係があります。葛根湯は7つの生薬で構成されており様々な働きを持っていますが、最も重要な働きと考えられるのが「体を温めて体温を上げる作用」です。
葛根湯は、かぜのごく初期、原因のウイルスなどが体内に入ってきて、まだ十分に増殖していない状態(ウイルスの力が弱い状態)の時に服用することで、体温を上げてウイルスを退治してかぜを治します。
体温が37~38℃くらいに上がると免疫力は、約5倍にはね上がるとされ、ウイルスが力を持つ前に、葛根湯で体温を上げることはかぜを治すのに非常に有効です。
但し、初期を過ぎて、ウイルスが増殖して力を増してしまうと効果が低下します。
また、症状がすすんで既に熱が上がって、体が上げ過ぎた熱を下げる為に汗をかいている場合には、熱を上げる方向に働く葛根湯は、体の働きを邪魔して体力を無駄に低下させる恐れがあります。
このために葛根湯を使うタイミングは、かぜの初期なのです。
葛根湯の正しい使い方
明確な症状が出ていなくても「鼻や喉、体の違和感」があり、かぜかなと思った「かぜのひきはじめのひきはじめ」のタイミング、初期のより早い段階で葛根湯を飲むのが正解です。
すぐに(空腹時が良いが、食後でも可)水ではなく白湯で飲んで、温かくして寝てください。翌朝起きて、すきっと治っている。葛根湯は、そんな効き方をしてくれます。
ここで注意したいのが、一般の方が思っているかぜの初期。悪寒や喉の痛みが出た時を初期と思って葛根湯を飲む方がいらっしゃいます。しかし、そのタイミングでは、遅過ぎます。そのもっと前、違和感があってかぜかもと思った時に飲んで下さい。
葛根湯と西洋薬(漢方以外の一般的なかぜ薬)の違い
西洋薬は、症状を抑える対症療法の薬です。ビタミンや生薬など、滋養強壮作用により体がかぜと戦うことを助ける成分を配合している場合もありますが、基本的には、つらい症状を抑えて体力の消耗を抑えると共に、安静を保つことを助ける為の薬です。西洋薬は症状を抑えますが、かぜを治しません。
葛根湯と西洋薬の最大の違いは、体温を上げることで免疫力を高めてかぜを治してくれること。かぜの初期に葛根湯を使い、初期で治せずウイルスが増加して免疫が亢進し、熱が上がった場合には、他の漢方薬を使ったり、西洋薬のかぜ薬を使って症状を抑えてしっかり休む(寝る)。この方法が、楽に効率的にかぜを治す方法だと思います。
体質(証)の説明のない葛根湯があるのはなぜ?
漢方薬は、患者の体質によって使う薬が決まるため、薬の効能・効果に体質の説明が記載されています。
しかし、ドラッグストアや配置薬の葛根湯には、この記載が無いものがあります。これらは記載が無い代わりに、効能・効果が「かぜ」に限定されています。
なぜ、記載が無いのか?それは、かぜに関しては体質が合わない人でも有効だからです。但し、体質による効きやすさの違いはあります。
葛根湯は、熱を上げることで効きくことから、元気な若者や体力のある中年の方など、熱を上げる体力のある人により有効です。一方、冷え性の女性や体力の衰えた高齢者など、熱を上げる体力のない方では、効き難くなります。但し、全く効かないわけではありませんので、白湯で飲んだり、しっかり温かくして寝るなどの対策で、熱を上げる葛根湯の作用をカバーしてあげましょう。
葛根湯の「得意なかぜ」と「苦手なかぜ」
葛根湯は、初期を過ぎたかぜにも使用できますが、その場合、体質だけでなく、かぜのタイプによっても効き方が大きく変わります。
かぜの症状別のタイプとして青いかぜ、赤いかぜなどの分類方法を聞いたことがあると思います。
葛根湯は、青いかぜを得意とし、赤いかぜを苦手としています。
青いかぜに、体を温める葛根湯が有効です。一方、熱感が強く熱が十分に上がりきった赤いかぜでは、体力の消耗につながる恐れがあります。赤いかぜには、他の漢方薬や西洋薬の一般的なかぜ薬などを使うと良いでしょう。
かぜのごく初期、「ぞくっ」ときたらすぐに白湯で飲んで、温かくして眠れば翌日には治る可能性がある。葛根湯はそんな漢方薬です。
うまく活用して、かぜから身を守りましょう。