日光浴は有害それとも有益? ①

ビタミンDの知られざる機能と紫外線の有害性

ビタミンDは、私たちの体内でカルシウムの吸収を助ける骨の健康に欠かせない栄養素です。日光を浴びることで私たちの体の中で作られ、太陽のビタミンとも呼ばれています。

このように日光を浴びることで、骨の健康が保たれることから健康の為に日光を浴びることが推奨されてきました。

しかし、近年は日光に含まれる紫外線の害が広く知られるようになり、女性を中心に、日焼け止めを塗るなど、日光を避けるためにしっかりと対策をされる方が増えています。

日光は、浴びた方が良いのでしょうか。
それとも浴びない方が良いのでしょうか。

今回の健康情報は、2回シリーズでビタミンDの健康への効果と紫外線の体への害を詳しく紹介しながら、日光浴の可否についてお伝えいたします。

第1回目の今回は、ビタミンDの知られざる機能と紫外線の有害性についてご紹介致します。

日光によって作られる太陽のビタミン

太陽のビタミン(ビタミンD)の驚くべき機能とは?

前記したようにビタミンDは、カルシウムの吸収を助けて骨の健康を守る栄養素として古くから知られていました。

最近の研究でビタミンDの新たな機能が多数報告されています。

ビタミンDの最近の研究内容

  • インフルエンザを予防(東京慈恵会医科大学)
  • 筋肉の強度を高めて転倒を予防(ハーバード大学公衆衛生大学院)
  • 不足によりがんのリスクが増加(国立がん研究センターほか)
  • 不足により心疾患のリスクが増加(カンザス大学医療センターほか)
  • 体内の脂質量を抑制(京都大学)
  • 不足により認知症を発症する可能性を指摘(ラトガース大学)
  • ビタミンDとカルシウム不足で糖尿病のリスクが増加(厚生労働省研究班)
  • 不足により高血圧、結核、癌、歯周病、多発性硬化症、冬季うつ病、抹消動脈疾患、自己免疫疾患などの疾病への罹患率が上昇する可能性を指摘(Holick, M. F., Vitamin D deficiency, N. Engl. J. Med, 357, 266-281, 2007.)
ビタミンDに期待される役割

ビタミンDを生み出す紫外線の危険性

1974年にフロンによるオゾン層破壊の可能性が指摘された後、スプレー缶への使用禁止やエアコンのフロンガス規制が始まったことを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。オゾン層の破壊は地上に届く紫外線を増加させ、現在も地上に降り注ぐ紫外線の増加傾向が続いています。

オゾン層が破壊されて紫外線の量が増加

気象庁による筑波での観測結果(1991~2016年)では、25年間で12%の紫外線の増加が確認されています。日光の中の紫外線は、私たちの健康に様々な悪影響を及ぼします。

紫外線が関係していると考えられている病気1)

急性 日焼け(サンバーン、サンタン)
紫外線角膜炎(雪目)
免疫機能低下
慢性 【皮膚】 シワ(菱形皮膚)
シミ、日光黒子
良性腫瘍
前がん症
(日光角化症、悪性黒子)
皮膚がん
【目】 白内障
翼状片
紫外線による健康への悪影響

紫外線には、私たちの体内にビタミンDを生み出すなど良い面もありますが、圧倒的に悪い面が多いと考えられています。更に、紫外線の増加により、過度に日光を受ける危険性は年々増加しています。

オゾン層破壊などが話題になった事もあって一般への啓蒙が進み、紫外線を避ける為に日焼け止めを塗る方が増えました。(ここ10年ほどで日焼け止めの出荷額は約2倍になっている。)女性など、必要以上に日光を避ける方も見かけるようになりました。

必要以上の紫外線対策

日光を浴びることにより体内で作られるビタミンDの機能及び日光に含まれる紫外線の危険性についてお伝えしました。
次回の健康情報では、これらを踏まえて日光浴の可否に関してお伝えいたします。

参考文献
1)環境省環境保健部環境安全課(2015)「紫外線環境保健マニュアル」環境省,PP.20

2019年01月31日
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