「あなたは体のどこで物を見ていますか?」との問いかけをするとほとんどの方が「目」と答えるでしょう。
しかし、物を見るという作業は目に加え、脳も大きな働きをしています。今回は、目と脳により物を見るメカニズムについてご紹介致します。
見る作業に対する目と脳の働き
目の働きは、よくカメラに例えられます。
目の「角膜」と「水晶体」がレンズにあたり、レンズのピントをあわせているのが「毛様体筋」と「水晶体」です。毛様体筋が収縮して水晶体の厚さを変えることでピントを合わせています。その動きはカメラのオートフォーカスだと考えると理解しやすいでしょう。
そして、映像を焼き付けるフィルム(デジタルカメラではセンサー)に当たるのが「網膜」です。網膜は、写った「風景=光・色・形」を、脳の中枢に伝えるための電気信号に変える役割を担当しています。電気信号は視神経を通して脳に送られ、脳が電気信号により網膜に映った物を認識することで私たちはその風景を見ています。
-ものを見るまでの情報の流れ-
角膜と水晶体
網膜(電気信号に変換)
視神経
脳
脳の補正機能と目と脳の健康
脳は、ただ風景を認識するだけではありません。目から得た膨大な情報を常に取捨選択、加工・補正を行う処理をしています。平面を立体としてとらえたり、元々ある目の視野の欠損「盲点」を補正したり、見え難かったり病気などで視野が欠損している場合にもその補正を行うことで視力を維持しています。
老化によって脳が衰えてくると脳の補正機能が衰え、視力も低下します。また、老化によって目の機能が衰えてくると脳の補正機能が酷使されて、脳が疲れやすくなったり、記憶力や集中力の低下にもつながります。
このように目の健康(見ることの健康)を保つには、目の健康だけでなく脳の健康を守る事も大切であり、また、脳の負担を減らすには目の健康を守ることも大切です。
脳の補正機能実験
脳の補正機能は、以下の実験で簡単に体験することができます。
盲点の実験
- 左目を閉じてモニターから腕を伸ばした距離まで離れます。
- 右目で下の×印を注視します。
- ×印の右側に●がみえていると思います。
- 視線を×印に固定しまままでモニターに近づきましょう。
あるところまで来ると●が消えてしまいます。これが盲点です。目は左右で補い合ったり、絶えず動いており、普段は気付きませんがこんなに大きな盲点(視野の欠損)が私たちの目にはあるのです。
次に左目を閉じて、下図から 15cm 位の距離をおいて
- 右目で×印を注視します。
- 視線を×印に固定したままでモニターに近づきましょう。
今度は、水色の円の中心が盲点に入るとオレンジ色に見え、交わる線まで見えてきます。これが脳の補正能力です。脳が、盲点に入った円の中心を見ることができないにもかかわらず、周りの情報からこんな感じだろうと判断して映像を補正して(創り出して)いるのです。
この働きは便利なようにも思いますが、視野が欠損している(実際は見えていない)場所があってもあたかも見えているように補正してしまい、緑内障などの病気に気付くのが遅れる原因になることがあります。また、視野の欠損に気付かずに生活していると事故に遭うリスクが高くなる可能性もあります。
本当の風景
脳が補正した風景
この脳の補正機能を理解し、視野が何かおかしいなと思ったら直ぐに病院を受診しましょう。
※盲点とは?
網膜から電気信号を受け取る神経線維は、束になって一カ所に集まり脳につながっています。神経線維が脳に向かって眼球から出ていく出口の部分には網膜がありません。その為に出口部分に写っている物を見ることはできません。この見えない部分を盲点といいます。