皮膚疾患の治療 ②

ステロイド製剤の安全な使い方

2回シリーズとして「皮膚疾患の治療」を取り上げます。
今回はその第2回、ステロイド製剤の安全な使い方です。

効果と副作用

ステロイドとは?

ステロイドは、副腎で作られる副腎皮質ホルモンの一種である「糖質コルチコイド」を元につくられた薬です。
炎症を抑えたり、免疫作用を抑える働きがあり、様々な病気の治療薬として使用されています。
皮膚疾患の治療でも皮膚の炎症を抑えて、はれや赤み、かゆみを改善する目的で使用されています。

ステロイドを配合したステロイド製剤は、作用の強さにより5つのランクに分けられ、一般用医薬品では弱い方から3つ目のランクまでの製品があります。
良く効く半面、副作用が強いため、作用の強いステロイド製剤では注意が必要です。

グラフ 薬の強さ

ステロイドと体への吸収について

人間の皮膚は、顔や足の裏など部位によって厚さが異なり、同じ薬を同量使用しても吸収量が異なることが知られています。
この為、部位ごとの吸収率に合った強さの薬を選択する必要があります。
選択を誤ると、薬が効かなかったり、副作用のリスクが高まる可能性があり、注意が必要です。

ヒトにおけるヒドロコルヂゾンの部位別経皮吸収率

正しく使用すれば怖くないステロイド

ステロイド製剤は、非ステロイド製剤に比べて非常に効果の高い薬剤です。
非ステロイド製剤で抑えきれない症状も改善することが可能です。
その反面、非ステロイド製剤に比べて強い副作用があります。
しかし、正しい使い方をすることにより、ほとんどの場合に副作用を回避することができます。

効果の高い非ステロイド製剤

ステロイド製剤の正しい使用方法

  • 1

    年齢や使用する場所に合った強さの薬を使用する

    皮膚が薄く、薬の吸収率が高い顔や陰部は、弱めのステロイドでも効果が出やすく、また、強めのステロイドでは副作用のリスクが高くなるので弱めの薬を選択すると良いでしょう。
    皮膚のバリア機能が未発達な乳幼児やバリア機能が衰えた高齢者でも、弱い薬を選択すると良いでしょう。

  • 2

    症状が出たらすぐに使用すると共に、短期間の使用に留め漫然と使用し続けない

    かゆみはかきむしることで症状が悪化します。かゆみが出たらすぐに薬を使用して症状を抑え、かきむしりを防ぎましょう。
    また、長期連用で副作用のリスクが高まることが知られています。
    5~6日で症状が良くならない場合は、漫然と使用せず早めにお医者様を受診しましょう。

  • 3

    感染性の疾患(みずむし、いんきん、たむしなど)には使用しない

    ステロイドの免疫力を抑える作用により、菌への抵抗力が弱まって症状が悪化したり治り難くなる可能性があります。
    感染性の疾患(みずむし、いんきん、たむしなど)の場合は専用の薬を使用したり、お医者様を受診しましょう。
    原因がはっきりしない場合もお医者様を受診しましょう。

  • 4

    化膿した部位には使用しない

    上記3と同じ理由により、症状が悪化したり治り難くなる可能性があります。
    皮膚に化膿が認められる場合は、ステロイドの使用を控えましょう。
    (但し、抗生物質を配合した一部のステロイド製剤は使用が可能です。)

  • 5

    広範囲に使用しない

    広範囲(ほっぺた一面以上の範囲)に使用すると副作用のリスクが高まります。
    極力、症状が出ている範囲のみへの使用に留めましょう。

症状や年齢、使用部位によって薬を使い分けると共に、上記のポイントやそれぞれの薬の説明書に従って正しく薬を使用し、不快なかゆみなどの皮膚疾患を抑えましょう。

2016年05月30日
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